経理業務に活かせる資格は、日商簿記や会計系のものなどさまざまです。身につく知識や難易度はそれぞれ異なるため、事前によく調べたうえで取得する資格を決めましょう。
本記事では、経理業務に活かせるおすすめの資格について、それぞれの難易度や必要な勉強時間とあわせて解説します。経理業務を担当している方、経理の仕事に興味がある方はぜひ参考にしてみてください。
経理業務に活かせるおすすめ資格を一覧で紹介
ここでは、経理業務に活かせる資格として以下の8つをご紹介します。
- 日商簿記
- ビジネス会計検定
- FP
- 中小企業診断士
- 税理士
- 公認会計士
- 米国公認会計士(U.S.CPA)
- IFRS検定(国際会計基準検定)
上記8つの資格についてご紹介しますが、経理業務に活かすなら基本的には日商簿記の取得がおすすめです。
経理の基礎知識が幅広く身につくほか、一般的な認知度も高いため、経理担当者としてのキャリアに大きく役立つはずです。
その他の資格は、すでに日商簿記を取得している場合や特別な専門知識が求められる場合に検討するとよいでしょう。
スタディングキャリアでは、保持資格を使って仕事探しができます。すでに資格を持っている方は自分の資格を生かせる求人を探してみてください。また、各求人を見て、経理でどういう資格が求められているかを確認するのもおすすめです。
日商簿記
簿記は、企業で行われる日々の取引を記録し、経営・財務の状況を明らかにするためのものです。
簿記の知識やスキルを測る資格としては、日商簿記が有名です。
業界を問わず、経理業務に従事するならまずは日商簿記の取得を目指すのがおすすめだといえます。
関連記事:日商簿記検定(3級・2級・1級)の概要と筆記試験・ネット試験の違い
以下、日商簿記3級から1級までの試験概要を見ていきましょう。
▼3級
日商簿記3級では、商品の販売や仕入の記録、決算書の作成など、基本的な商業簿記の知識が問われます。
出題科目 | 商業簿記 |
勉強時間の目安 | 50~100時間 ※ |
※講座などを利用して効率的に学習した場合を想定
日商簿記3級を取得すれば、ビジネスパーソンとして必要な簿記の基礎知識が備わっていることの証明になります。
しかし、簿記を初めて学ぶ方でも十分合格できる難易度であるため、経理職としてのアピールにはあまり効果的とはいえないでしょう。
経理職としての就職・転職やステップアップを目指すなら、3級合格後に2級やその他の資格を目指すのがおすすめです。
関連記事:簿記3級とは|試験の概要や合格率の推移、勉強方法をまとめて解説
▼2級
日商簿記2級では、商業簿記において3級より広範囲かつ専門的な内容が問われるほか、工業簿記が科目として追加されます。
出題科目 | 商業簿記・工業簿記 |
勉強時間の目安 | 100~200時間 ※ |
※3級レベルの知識を習得済み、かつ講座などを利用して効率的に学習した場合を想定
日商簿記2級を取得すれば、経理担当者として実用的な知識を備えているとみなされるでしょう。
経理担当者としてステップアップを図るなら、ぜひ取得しておきたい資格です。
関連記事:簿記2級とは|試験の概要や合格率の推移、勉強方法をまとめて解説
▼1級
日商簿記1級の試験は、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算という4つの科目で構成されます。
出題科目 | 商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算 |
勉強時間の目安 | 400~600時間 ※ |
※2級レベルの知識を習得済み、かつ講座などを利用して効率的に学習した場合を想定
日商簿記2級でも十分実務レベルだとはいえますが、大企業における連結決算などより専門性の高い業務を行うには、1級レベルの知識が必要になるでしょう。
日商簿記1級を取得しておけば、さまざまな企業から経理担当者として高く評価されるはずです。
関連記事:日商簿記1級の難易度や必要な勉強時間は?取得するメリットや科目別攻略法も紹介
ビジネス会計検定
ビジネス会計検定は、財務諸表の数字を理解し分析する能力を問うもので、難易度別に3級から1級に分かれています。
3級・2級はマークシート方式、1級はマークシート方式+論述式の試験です。
実施級 | 3級 | 2級 | 1級 |
勉強時間の目安 | 50~100時間 | 100~200時間 | 300~500時間 |
会計全般の仕組みや流れを理解しておきたいという方におすすめの資格です。
貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を読み解く力が身につけば、あらゆるビジネスで役に立つため、就職・転職やキャリアアップに活かせるでしょう。
関連記事:簿記の貸借対照表とは|損益計算書との違いや書き方、問題の解き方を解説
FP
FP(ファイナンシャルプランナー)は、お金に関する幅広い知識が求められる資格です。
「日本FP協会」と「金融財政事情研究会(きんざい)」の2団体が実施している資格試験のいずれかに合格すると、FPの資格が得られます。
実施団体によって試験内容が一部異なりますが、どちらの団体で受験しても資格の価値は変わりません。
実施級 | 3級 | 2級 | 1級 |
勉強時間の目安 | 80~150時間 | 150~300時間 | 450〜600時間 |
FPはお金に関する幅広い知識が身につく資格ですが、金融・税金・保険などの観点から他者をサポートするためのものです。
自身の経理業務に活かせるかどうかはよく精査する必要があるといえるでしょう。
中小企業診断士
中小企業が抱える経営課題の解決に向けた提案を行うのが、中小企業診断士です。
1次試験と2次試験の両方に合格することで資格取得となります。
試験内容 | 1次試験(マークシート)、2次試験(筆記、口述) | |
勉強時間の目安 | 1,000時間 |
経理業務に関連する「財務・会計」のほか、「経済学・経済政策」や「企業経営理論」など、多岐にわたる科目を学習する必要があります。
必要な勉強時間の目安が1,000時間であることからも、難易度の高い試験だといえます。
中小企業診断士の資格を取得すれば、経理業務だけでなく経営全般やマーケティングでもスキルを発揮できるでしょう。
税理士
税理士は、税金の申告や納税を補助する業務など、さまざまな業界で税務に関わる専門家として活躍できる資格です。
試験では、会計学2科目と税法3科目の合計5科目が課されます。
試験内容 | 会計学2科目、税法3科目 |
勉強時間の目安 | 2,500~3,000時間 |
税理士試験に合格するには2,500~3,000時間の勉強が必要とされており、1日3時間学習したとしても2~3年はかかる計算になります。
難易度は高いものの、経理業務から税務の専門家としてステップアップしていきたい方は取得する価値があるでしょう。
関連記事:日商簿記1級の難易度は?税理士(簿記論)やその他の資格と比較解説!
公認会計士
公認会計士は、会計の専門家として企業の監査業務に従事できる資格です。
短答式試験4科目と論文式試験5科目の両方に合格することで資格取得となります。
試験内容 | 短答式4科目、論文式5科目 | |
勉強時間の目安 | 3,000〜5,000時間 |
公認会計士試験は、会計だけでなく監査論や企業法、租税法などの知識も問われる試験であり、合格するには3,000~5,000時間の勉強が必要だといわれています。
まずは簿記1級などを取得したあと、会計領域でさらなるステップアップを図りたい場合に目指すのがおすすめです。
関連記事:日商簿記1級と公認会計士の違いは?学習範囲や難易度を比較解説
米国公認会計士(U.S.CPA)
米国公認会計士(U.S.CPA)は、その名の通り米国において認定される公認会計士資格です。
試験は日本でも行われており、国内で受験が可能です。
試験内容 | Multiple Choice(MC)4択問題、Task-Based Simulation(TBS)総合問題 |
勉強時間の目安 | 1,000~1,500時間 |
必要な勉強時間の目安は公認会計士と比べて少ないものの、試験はすべて英語で実施されるため高い英語力も求められます。
経理・会計の知識を活かしてグローバルに活躍したい方におすすめの資格だといえます。
関連記事:簿記を英語で身につけるメリットとは?基本用語の英語表記や関連資格も紹介
IFRS検定(国際会計基準検定)
IFRS検定(国際会計基準検定)は、国際会計基準としてグローバルに浸透している「IFRS」の知識を証明できる資格です。
試験内容 | 選択式 |
勉強時間の目安 | 150~200時間 |
日本企業においても、グローバルに事業を展開している場合はIFRSの理解が問われる場面が増えています。
IFRSの理解を深めたい方や、将来的にグローバルな活躍をしたいと考えている方は取得を検討してみるとよいでしょう。
経理の資格に関するよくある質問
ここでは、経理の資格について以下3つの質問にお答えします。
- 簿記以外の資格でも役に立つ?
- 経理業務に資格はいらない?
- 独学でも取得できる?
順番に見ていきましょう。
簿記以外の資格でも役に立つ?
経理の分野において、とくに知名度が高い資格といえば日商簿記です。
経理業務における基本的な仕訳から会計知識まで網羅的に学べるため、経理に携わるならぜひ取得しておきたい資格だといえます。
ビジネスパーソンの必須知識としても認知されているため、キャリアのさまざまな場面で役立つはずです。
その他の資格については、具体的に担当する業務や就きたいポジションが決まっており、その仕事に必要な資格・知識であれば取得を検討するという流れがよいでしょう。
たとえば、税務のスペシャリストとしてステップアップしたい場合は税理士、グローバルに活躍したい場合は米国公認会計士といったイメージです。
ただし、経理関連の資格で簿記の知識が役に立つケースは多いため、経理の業務全般に幅広く対応したいという方は、まず初めに簿記の知識を身につけておくのがおすすめだといえます。
スタディングキャリアでは、各求人ごとに業務で求められる資格をご紹介しています。経理志望の方はもちろん、それ以外の職種に興味がある方もぜひチェックしてみてください。
関連記事:簿記資格取得のメリットとは?資格の取り方や難易度、独学が可能なのかも解説
経理業務に資格はいらない?
公認会計士や税理士には独占業務がありますが、一般的な企業の経理業務であれば資格が必須というわけではありません。
実務に必要な知識が備わっていれば、問題なく対応できるでしょう。
しかし、経理業務において資格の取得がメリットになるのも事実です。
たとえば、社内でのキャリアアップや就職・転職の際、知識レベルを客観的に証明するものとして資格を活用できます。
簿記の知識があるといわれても、資格や実務経験がなければ信頼してもらうのは難しいでしょう。
また、資格勉強を通して体系的に知識を身につけられるのも大きなメリットです。
実務をこなしながら経理の知識を身につけるのももちろん可能ですが、必要な部分だけを断片的に学習することになりかねません。
経理のスペシャリストとして長く活躍したいのであれば、やはり資格取得を通して網羅的に学んでおくのがおすすめです。
独学でも取得できる?
必要な勉強時間の目安が100~200時間程度のものであれば、独学で取得できる可能性はあるといえます。
たとえば、日商簿記であれば3級や2級は独学で合格している人がいるのも事実です。
ただし、財務諸表の仕組みや仕訳の仕方など、初めて学ぶ方にとってはなじみのない内容も多いでしょう。
とくに日商簿記2級になると、商業簿記に加えて工業簿記もカバーする必要があるため、効率的に学習を進めていく必要があります。
通信講座やオンライン講座ならそこまで費用はかわらないため、不安に感じる方は利用を検討してみるとよいでしょう。
スタディングでも簿記、FP、中小企業診断士、税理士など資格講座を多数開講しています。新たに資格取得にチャレンジしたいとお考えの方はぜひご利用ください。
関連記事:日商簿記1級・2級・3級は独学で合格可能?それぞれの目安勉強時間や勉強法も解説
まとめ
本記事では、経理業務に活かせるおすすめの資格について、それぞれの難易度や必要な勉強時間とあわせて解説しました。
ポイントをまとめると、以下の通りです。
- 経理業務全般に活かしたいなら、日商簿記がおすすめ
- 業務内容が絞られている場合は、その他の資格を検討するのがよい
- 経理業務に資格は必須ではないものの、キャリアアップや体系的な知識の習得につながる
- 日商簿記3級・2級は独学での取得も可能なレベル
- ただし効率的な学習が必要なため、不安な場合は通信講座やオンライン講座がおすすめ
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